ブラック飲食店が「寮・社宅完備」「家賃・引越し手当補助」を掲げる本当の理由

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クマログ
業界歴15年の元飲食店社員。過酷な労働環境にウンザリし、飲食を去る決意をする。苦戦続きの転職活動の結果、営業職に転職成功。人生が良い方向にガラリと変わったのでその感動をみんなにも伝えたい。努力次第で「飲食店⇒未経験職」転職は可能 。都内在住アラサー男子。

飲食業界の求人を見ていると、よく目にするフレーズがある。


●寮・社宅完備
●職場◯km圏内で家賃補助あり
●引越し手当全額支給

一見、魅力的に見える福利厚生だ。
地方から上京したい人や生活費を抑えたい人には、ありがたい条件に思えるだろう。

だが、元飲食店の料理長として断言する。
こうした「寮・社宅完備」を掲げる飲食店の多くは、ブラック体質を抱えている可能性が非常に高い

この記事では、俺が実際に見てきた飲食業界の裏側をもとに、
「なぜ寮や家賃補助がブラックのサインになるのか」を徹底的に解説する。

「寮・社宅完備」「家賃・引越し手当補助」を掲げる理由

安い家賃で“縛る”構造になっている

寮や社宅の一番の魅力は「安さ」だ。
求人にはこう書かれている。


●家賃1万円で個室
●水道光熱費込み
●即入居OK

確かに聞こえはいい。だが、その裏には自由を奪う仕組みが隠されている

仕事と住まいがセットになっているということは、
辞めた瞬間に住む場所も失うということ。

つまり、「生活=会社」になってしまう。
これこそブラック飲食店が最も好む構造だ。

「辞めたい」と思っても、家を失う恐怖から抜け出せなくなる。
まるで生活を人質に取られているようなものだ。

給与天引きと退去費用の罠

次に多いのが「給与天引き」による搾取だ。

求人票には「寮費1万円」と書かれていても、実際の明細を見れば、
水道光熱費・管理費・清掃費などの名目で、数万円引かれていることも珍しくない。

さらに退職時には「退去費用」として数万円を請求されるケースもある。

これがブラック飲食店の常套手段だ。
あなたの口座から直接引かれないからこそ、金銭感覚を狂わせる
そして、会社の都合のいい金額を「決められるまま」払ってしまう構造になっている。

辞めづらくする心理的な囲い込み

寮に住んでいると、多くの人がこう思う。

次の家、どうしよう…

この不安が、会社に依存する最大の原因になる。
辞めたら住む場所がなくなるから、我慢して働き続ける――。

ブラック企業はここを狙っている。
「逃げ場をなくせば辞めない」という心理的な拘束を仕掛けてくるのだ。

俺が知っている某居酒屋チェーンでは、地方の若者を寮付きで大量に採用し、辞めようとすると上司がこう言い放った。

じゃあ家も出てもらうよ

これではもう奴隷契約と変わらない。

「職場近くに住めば家賃補助」の裏側

一見ホワイトに見えるのが、「職場近くに住めば家賃補助あり」という制度。
だが、実際はこれも社員を縛りつけるための仕掛けだ。

職場の徒歩圏内に住むと、

  • 上司に休日でも見られる
  • 突発的な呼び出しに即対応させられる
  • プライベートがなくなる

という最悪の状況が待っている。
つまり、家が「待機所」と化すのだ。

さらに、「会社指定の不動産業者経由じゃないと補助が出ない」など、
細かいルールで社員を完全にコントロールしてくる企業も存在する。

引越し手当も“合法的な首輪”になり得る

ブラック企業は、引越し手当さえも社員を縛る道具に使う。

「引越し費用を会社が負担します」と言いながら、在籍期間が短いと「返金してください」と請求されるケースがある。

さらに、会社指定の物件に住むことが条件になっていることも多い。
これでは完全にコントロールされているのと同じだ。

本来、引越し手当は「社員を支援するための制度」だ。
それを「辞めさせないための道具」に変える時点でブラック確定だろう。

「住まいの安心感」がブラックの罠になる

人間にとって「住まい」は絶対的な安心だ。
だがブラック飲食店は、その“安心”を利用して人を縛る。

「住む場所があるから安心」と思わせ、実際は逃げ場を奪う。
中には、寮が郊外や山奥にあり、駅もコンビニも遠いケースもある。
物理的に逃げられない環境を作っているのだ。

こうなると、休日も職場の人間と過ごすことになり、
心身ともに完全に支配される。

それでも寮を選ぶなら確認すべき5つの項目

もしどうしても寮や社宅を選ぶなら、
最低限以下のポイントは必ずチェックしてほしい。

  • 家賃・光熱費・管理費の内訳が明確か
  • 給与天引きの金額を事前に確認できるか
  • 退去時の条件(敷金・違約金)は明示されているか
  • 個室か相部屋か(プライベートの有無)
  • 退職時の猶予期間があるか

これを確認せずに「安いから」と決めるのは危険だ。
安さの裏には必ず“制約”がある。

契約書を読むことが最大の防御になる

ブラック企業が最も嫌うのが「契約書をしっかり読む社員」だ。

契約書には、企業側に都合のいい一文が必ず潜んでいる。
たとえば以下のような文言だ。

●退職時は手当の返金を求める場合がある
●会社指定の物件に住むことを条件とする
●補助金額は会社が定める範囲に限る

こうした一文が、後で大きなトラブルの原因になる。

面倒でも契約書は必ず読め。
そして分からない部分は労基署や労働相談窓口に確認してほしい。
読むこと自体が、ブラックから自分を守る最初の武器になる。

もし今ブラック飲食にいるなら

ここまで読んで、「まさに自分のことだ」と思った人もいるはずだ。
だが安心してほしい。抜け出す方法はある

まずは、外の世界を知ること。
今の職場だけが人生のすべてではない。
俺もそうだった。
400時間労働の飲食店を辞めて、ホワイト企業に転職して人生が変わった。

転職サイトや退職代行を使うのも一つの手だ。
最近では「飲食業からの転職支援」に特化したサービスも増えている。

まとめ:寮や家賃補助は「福利厚生」ではなく「首輪」かもしれない

もう一度整理しよう。

  • 住まいと仕事がセット=逃げられなくなる
  • 天引きで搾取される
  • 家賃補助は監視と拘束のための首輪
  • 引越し手当は辞めさせない仕掛け

つまり、表向きは「福利厚生」でも、実態は労働者を囲い込むための仕組みになっている。

寮・社宅完備や家賃補助という言葉に釣られる前に、一度立ち止まって考えてほしい。

「その安心感は、本当に自由を守ってくれるのか?」

俺の結論はシンプルだ。
ブラック飲食店の求人にある“好条件”ほど、まず疑え。

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