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俺がとある飲食店で料理長(店長兼務)をしていた時の話だ。
自慢にはならないが、1ヶ月の労働時間が平均400時間前後という過酷な現場で1年半勤めてきた。はっきり言ってもう二度と経験したくはないし、時間とエネルギーの無駄をした後悔が今もなお残ってる。綺麗事を言うつもりはないが、同じような激務を俺以外の他の人には経験してほしくない。
断言するが、400時間労働は得るものなんて何一つもない。それどころか、失うことだらけだ。
このページでは俺が実際に経験したことをベースに、長時間労働をすることの危険性や失うものについて伝えて行こうと思う。その上で、もしこのページを読んでるあなたが、今現在、長時間労働が避けられない職場で悩んでる場合の解決策も一緒に考えていきたい。
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1ヶ月の労働時間が400時間を超える理由

母体である会社そのものがブラック企業だということ。それに加えて、人手不足で休日を返上せざるを得ないとある飲食店で働いていた時。
もともと1ヶ月の休みは社員は6回以上と決まっていたがアルバイトの主力メンバーが揃って卒業してしまったり、2年目、3年目の若い衆が辞めてしまったこともあり、人手のなさが深刻化して、所定の休みを取ることは不可能な環境となっていた。その責任を取らされるかたちで、その店の料理長が別の店舗に移動となり、代わりに後を引き継いだのが俺ということになる。
環境の悪さが社内でも有名だったその店の料理長として、経験の浅い私が大抜擢された。ピンチな店を任せてもらえた高揚感もあり、
「なんとしてでも立て直してやる!」
とかなりの意気込みで業務に取り組んだ。そのため、移動した最初の月は休みが1回だけだったが、その時は特に苦に感じることはなかった。
お店の営業時間は
11時〜0時
入店ラスト23時
ラストオーダーが23時30分
であったため、社員の出勤時間は
9:00~0:00
(休憩1時間)
拘束時間16時間
1日の拘束時間は16時間。一応休憩は1時間取れるという決まりだが、仕込みや発注等の事務業務、1日数回の朝礼や会議があるため、実質賄いを食べる10分だけ。余った分の休憩時間はいつもサービス業務時間だった。
シフト自体は0時までとなっているが、閉店ギリギリに来た客が遅くまで食事をしていたら当然帰りは遅くなるし、自分のタスクが残ってる場合は深夜1時を過ぎることもザラにあった。
つまり、このページの内容の舞台となる問題のお店は、
15時間(実働時間) × 出勤日数 =月間労働時間
という式に成り立つ。
休みが1回しかなければ、
15 × 30(29)= 400時間を余裕でオーバー
ということに。
仮に月に休みが6回取れたとしても、300時間後半という、法定労働時間の2倍は働くことになるブラックな職場そのもです。
平均400時間労働を続けているうちに失ったもの
- プライベートの時間
- 健康な体
- 判断力や思考力
プライベートの時間

毎月400時間も働くと当然ながら、プライベートの時間なんかあるはずがない。
■友人や知り合いと飲みに行くことが出来ない
■恋人と過ごす時間がなくなり破局
■年末年始に親元に顔を出すことが出来ず、疎遠になる
■趣味や気晴らしに使用する時間すらない
■本来学びたい調理技術や仕事術を勉強する機会もなくなる
見ての通り、ライフワークバランスもクソもないだろう。
極稀に平日ディナータイム前に早退出来たり、奇跡的に丸一日休みが取れたとしても、待っているのはゴミ出しや掃除・洗濯といった家事。それらを終えても、その後は普段行けてなかった歯医者で治療を受けたり、伸び切った髪を切りに美容院に行くだけ。
帰宅する頃に、街には夕方をお知らせするチャイムが街中に響き渡っている。
「一体何のために生きてるんだおれは…」
そう最初に感じた時点でその会社を辞めておくべきだったと今でも後悔が残っている。
健康な体

説明するまでもないが、1ヶ月400時間前後の労働を1年半続けたら健康を損なう。
■出勤前・帰宅後・休日に家で過ごしていても常に身体がダルい
■顔色が常に青白くなる
■抜け毛が増える
■謎の蕁麻疹が体中に出来る
■体重が1年半で12キロ痩せる
あらゆる体の不調が付きまとう毎日だった。振り返ってみても、「おれよく死ななかったな…」と思うくらい。
判断力や思考力

長時間労働が続くと確実に判断力や思考力が低下する。正確に言えば、健康に害を及ぼすレベルで疲れが溜まると人間だれでもバカになる。
狂います。
普段は何の問題もなく人とコミュニケーションができている人も、疲労度が高まると、途端に他人を許す、自分を許すということが難しくなり、ささいなことでキレるようになるのです。
引用:ヘルスアップ日経Gooday「寛容力低下の8割は「プチうつ」が原因」
「疲労がある段階に達すると、意思とは関係なく、気力と集中力が低下する。すると本来の問題解決力が発揮できなくなり、トラブルが増え、さらに疲労がたまるという悪循環に陥るのだ。
引用:元自衛隊メンタル教官が教える 「折れてしまう」原因は、ストレスではなく◯◯だった
本来のその人なら周囲に助けを求めることもできるが、この状態になるとイライラや猜疑心が非常に強くなり、簡単に援助も求められなくなる。いつもの彼とは違う状態になってしまうのだ。私はこれを「別人化」と呼んでいる。
酒を飲んでテンションが上った時のことをイメージすればわかりやすいだろう。知らない間に自分の意志とは反するような行動を取るようになる。
俺の実体験だと…
■隣の家を自分の部屋と勘違いし、不法侵入してしまう
■牛丼屋に来たが、注文を決めることが出来ずそのまま帰宅
■電車の窓に映る自分に向かって意味不明な言葉をかけ始める
■帰宅後シャワーを浴びて寝床に入ったのに、シャワーを浴び忘れたと勘違いしもう一度起きてシャワーを浴びに行ってしまう
■ネットショップや普段の買い物で必要のないものに浪費するようになる
■以前はまったく行かなかったパチンコにハマる
恥ずかしいが、上記は全部自分の実体験だ。
逆に得たもの
ありません。
これだけ過酷な仕事を乗り切ったのだから、さぞかし飲食店の社員としての実力がついたと思われるかもしれない。でも実際は疲労のせいでほぼ思考停止状態でオーダーをこなす毎日の繰り返しなので、毎月400時間前後ひたすら働き続けても、結局はその飲食店だけに通用する能力しか会得出来ない。
まともな判断力と思考力を欠いた中での仕事は創造性やひらめきなどが完全に失われてしまうのだ。
強いて言うなら
400時間労働で得たものを無理矢理でもあげるとすれば、自分の体験談を元に長時間労働を続けることの危険性を多くの人に発信できることだろうか?
長時間労働を抜け出せない理由
残業が多かったり、そもそもの1日の所定労働時間が長すぎる職場にはある特徴があり、それは、
恒常化(それが当たり前という空気になる)してる
ことだ。
各々の時間と体力を切り売りして成り立っている職場が、明日からいきなり8時間労働・月間公休回数10日など出来るはずがない。
ダラダラと劣悪な環境を続けてきた職場にはアイディアと施策で生産性を上げて、一人あたりの負荷を減らそうなんて発想が思い浮かばない。
長時間労働により頭も体も心も疲弊し、創造性や思考力を失った結果、アイディアや解決策を練ることが出来ない。
結果的に劣悪で長時間労働が避けられない職場が続いてしまう。
ということ。
ましてや400時間近くの労働を続けると全ての思考の感覚がマヒするため、日常のルーティーンを感情なしで行うことしか出来ない。このまま続けてたらヤバいと思いつつも脳が半分狂った状況なので、上層部や経営陣のさらなる無理難題も抵抗することなく受け入れてしまう。
当然、
新人の教育などまともに出来るわけでもなく、優秀な人材ほど早めに見切りをつけて辞めていく。
人手不足が解消されるはずもなく、現場にいる社員の負担が減ることなどありえない。管理職でなおかつマジメな人であれば、辞めようにも辞めれず、常に「自分が悪い」と頑張り続けてしまう。
そういう人の心理を巧みに利用するブラック企業の上層部の思惑通りということに。
限度を超えた長時間労働は早く抜け出すべき
400時間前後の働き方を1年半続けた感想を一言で表わせと言われたら、
地獄
としか思いつかない。
今思えば異常なことしてたと薄気味悪く感じると共に、本当に死ななくて良かったと思う。もしかしたら、このページを読んでくださってる人の中には長時間労働が避けれれない職場で働いている人もいると思う。地獄のような経験をした俺だからこそ言えるのは、
体を壊す前に辞めるべき
この一言につきる。
劣悪な環境を打破する唯一の方法は辞めることでしかない。
営業所やお店の管理責任者になり、残業や休日出勤をなくす仕組みづくりをすれば、もしかすれば環境を変えることが出来るかもしれない。しかし、たった一人で実行するのはかなり難しいし、何より膨大な時間と労力が必要となる。その間に体を壊せば元も子もない。仕事どころか今後の人生の大きな損失になってしまう。
俺自身も、旧知の仲である知人と食事に行った時に辞めることを強くすすめられて、冷静さを取り戻した結果、転職活動を始めた。今では1ヶ月の労働時間が約半分となり、心身ともに健康で充実した毎日を送ることが出来ている。
ヤバい職場を辞める決断をしたことは本当に正解だったと強く思っている。もしあのまま続けていたら、どうなっていたか…。考えただけでも寒気がしてくる。
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